宗教改革などを経て、人々は封建的な社会から民主的な社会に移行し自由を勝ち取った。だが、その自由は、個人に孤独と責任を生み出し、重圧となった。『自由からの逃走』は、そんな現代人の社会的心理を見事に表現している。ナチスドイツの時代に書かれた本書は、ポピュリズムが生まれる構造を解き明かすと言う点で、現代でも色褪せない一冊と言える。『愛するということ』『生きるということ』の著者としても知られるエーリッヒ・フロムは、フロイト心理学を学び、そこに社会的な関心が加わり、独自の社会心理学を構築した。古典と言われる本書は、無駄な一文が一つもないほどソリッドに論旨が語られる。その意味でも、古典と言われる本の中では読みやすい。変動する社会の中で、人の心理の変わりやすさを指摘する本書は、いまなおというより、いまこそ読まれる本と言える。